【食の歳時記】報恩講が紡がれる里

郡上市 明宝の里では、今でも報恩講(ほうおんこう)が紡がれています。

浄土真宗では、親鸞聖人の命日にその遺徳をしのんで営む仏事を「報恩講」と言います。
明宝でも「ほんこさま」と呼ばれて厚い信仰のもと、お勤めが行われています。

神仏参詣のお世話をする「講元(こうもと)」では、門徒が毎年交代交代で勤め、煮物、和え物など、各人が家で作って持ち寄ります。

「報恩講やで、雪が降るぞ、なんていうような時期やった。それで、雪でも降ると講元やなんえらかったで。男衆にも出てもらわにゃヤワイができんようなこともあったで」

「お斎(おとき)は高々まんまに、豆腐、芋、こんにゃく、それにじんだ(汁)。

檀家でなくても、木札をもらってお斎につけたで、こどもの楽しみやった」

ごちそうが振る舞われる報恩講は、里の人々が楽しみに、そして大切にしている行事です。

今も明宝の各地域のお寺で受け継がれているほんこさま。
明宝のお母さん達から教わった、ほんこさまのレシピを紹介します。

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【なます】紅白のなますに豆腐をからめた口あたりまろやかな白和え

●材料
大根(軟らかいもの) 1本 / 堅豆腐 1/2丁 / 粉末ピーナッツ(またはゴマ) 適量 / 人参 彩りに / 柚子 / 砂糖 適宜 / 塩 適宜 / 酢 適宜

●つくり方
(1)大根と人参の皮を剥き、千切りにして塩をふり、前の晩から半日程度置いておく。
(2)堅豆腐をザルにのせ水をしっかりと切り、潰しておく。
(3)水の出た大根と人参をふきんに包んでかんかんに絞る。
(4)粉末ピーナッツをよくすり潰し、豆腐を入れてなめらかになるまでよく混ぜ、砂糖、塩、酢で味を整える。

●メモ
・やわらかい大根と、にんじんは彩りに。
・豆腐をからめてまろやかにし、さらにピーナッツやゴマでコクと香ばしさを加えます。

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【金時豆と大根の煮豆】一度にたくさん作ってじっくり煮詰めた家庭の味

●材料
金時豆 300g / 大根 / 出汁 適量 / 砂糖 大さじ2 / 塩 小さじ1 / 濃い口しょう油 大さじ1

●つくり方
(1)豆は前もってポットに浸けておく。
(2)鍋に豆、水を多めに(ひたひたよりも多く)入れて火にかける。
(3)10分ほどしたら、吹きこぼれないように弱火にする。
(4)大根はサイコロ状に切り、下茹でしておく。
(5)出汁に砂糖としょう油を入れ1度煮立たせ、豆と大根を入れる。
(6)煮汁に入れたまま1晩ふやかすのがここ、20年くらいのつくり方。

●メモ
・「豆(達者)になる」といわれ、豆は煮ものには欠かせない食材。
・皮がやぶれるので、豆を煮る時はまぜない。
・明宝では、大根と豆の煮物はよく食べられているポピュラーな料理。大根はサイコロ状に切ると味がよく染みる。

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その他の報恩講料理
菓子椀
しいたけ、焼き豆腐、にんじん、ほうれん草を、それぞれ別に煮て味をふくませ、お菓子を盛る椀に盛り付けて出汁を張ります。

芋の天ぷら、こんにゃく、ごぼう、芋きんとん等、山の幸をふんだんに使って作られたおかずと共に、
お椀に高々と盛られた「たかたかまんま」をいただきます。ごはんは、蓋をお皿にして少しずつ取っていただき、食べきれない分は持ち帰りました。
白いご飯が貴重であった往事には、高々まんまが何よりのごちそうであったことでしょう。
「畑佐鉱山が全盛のころは、12月1日を中日として前後一日、計三日間であった。それは一日、十五日が休業日になっていたからである。」
ほんこさまは地域の一大イベント。この日には、老若男女がお寺にお詣りし、報恩講のお料理をいただきました。

*かっこ内は明宝村史より抜粋